丘浅次郎の名言紹介を続けます。
「以上は国を人類生存競争の最高単位と見なして述べたのであるが、実は国より上になお一つ生存競争の単位がある。それはすなわち人種であって、人種間の生存競争は今後ますますいちじるしくなるであろうと思われる。もっとも今日(こんにち)は幾つかの異なった人種が相集まって国をなしているところがあるが、これは自ら守る目的のためだけで、かく相集まらなければ、自分らの生存が危ういという場合のみに限られてある。かかる国は外に対しては一国であるが、内では人種と人種との軋轢(あつれき)が絶えない。もし自分を守るために他人種と合して一国をなす必要がなくなれば、その国は当然数ヵ国に分裂してしまうに違いない。かりにロシアやドイツも弱くなって滅びるようなことがあるとすれば、オーストリアとハンガリーとは結合しておりそうもない。その他ボヘミアとか何とかみな離ればなれになるかもしれぬ。つまり異人種が集まって一国をなすのは周囲の境遇がしからしむるので、敵に周囲から締められて合同しているありさまはあたかも桶に輪がはまっているので木片がばらばらに離れぬのと同じ理(ことわり)である。すなわち人類の生存競争の根本は人種間の競争であって、これはいかなる境遇にあっても決して絶滅せしめうべき望みはない。」
名言紹介(57)でもご紹介したとおり、丘のこの名言は1905年(日露戦争の終わり頃)に書かれたものですが、上記の多民族国家「オーストリア・ハンガリー帝国(「ボヘミア王国」も包含。)」は第1次世界大戦(1914年~1918年)に敗北して、1918年に解体しました。丘の先見の明には、たびたび驚かされてしまいます。
それでは今回はここまでとして、次回はこの続きからご紹介したいと思います。
(文責:弁護士 澤村康治)