澤村こうじ法律事務所

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コラム2025年1031

名言紹介(55)「丘浅次郎(おかあさじろう) その5」

 丘浅次郎の名言紹介を続けます。

「団体として敵に当たる場合には内部の一致が何よりも必要であるが、団体生活をする動物には自然にこの性質が備わっている。敵国と戦う際には挙国一致と称して、人民は重い税を払わせられながら一言の苦情も言わぬ。目の前に商売がたきの店があると挙店一致も行なわれやすく、倒すべき相手の会社ができると挙社一致も容易に行なわれる。すべて外に敵がある間は内部は固く団結するが、敵がなくなるととかく内部に争いが起こる。手腕ある政治家はこの辺の消息に通じ巧みに国民の敵愾心(てきがいしん)を外に向けて国内の紛擾(ふんじょう)を避けることがある。団体の内部の争いのために費やす力は団体が外に向(むこ)うて働く力から引き去られるゆえ、かかる団体は充分に敵と戦うことはできぬ。内部に毫(ごう)も争いのない理想的の団体は全力を敵に向けることができるゆえ、かかる団体間の競争はきわめて劇烈である。これらのことを総合して考えてみると、団体が外に向うて行なう競争と、その内なる各部の間の競争とは、一定の関係を有し、一方が増せば他方が減じて、つねに相反対に増減するものなることが分かる。人類のごときは国と国とで相争うゆえ、国内の各部分の間に無制限の競争は行なわれがたく、また国内の各部分の間に競争があるゆえ、国と国との間にも思い切った殺し合いは容易にできず、いずれも充分な働きができない。人類の国と国との間には絶えず小紛擾がありながら、容易に大戦争の始まらぬのは、全く各国ともにその内部に競争があるためである。さればこの姿を見て、人類の生存競争は他の動物に比してゆるやかなりと思うのは、これまた大なる誤りと言わねばならぬ。」

 上記言葉は、団体における対外競争の規模・程度と対内競争の規模・程度とが反比例のような関係にあることを示しており、団体というものは常に用心していないと、全体主義に傾いていく危険性があることを気付かせてくれるように思います。
 それでは今回はここまでとして、次回はこの続きからご紹介したいと思います。

(文責:弁護士 澤村康治)
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