澤村こうじ法律事務所

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コラム2024年0628

名言紹介(39)「末広厳太郎 その2」

 末広厳太郎の名言紹介を続けます。

「元来(がんらい)法学については――他の諸学部と違って――中学や高等学校で予備知識を与えられる機会が少ない。なるほど法制経済(ほうせいけいざい)とか、公民科とか、法学通論(ほうがくつうろん)とか、多少法律知識を与えることを目的とする講義が行われてはいるけれども、これらの講義はすべて一般的教養としての法律常識を与えることを目的とするものであって、学問としての法学の何たるかを教えることを目的とするものではない。高等学校の法学通論においては、教授それぞれの考えで、法律常識を与えんとするよりは、むしろ法学的基礎知識を与えることを主眼(しゅがん)としていると思われる講義も行われているやに聞いているが、なにぶんにも講義時間が少ないのと教授に専門的法学者を求めることの困難のために、この種の講義を通して、大学の法学教育ではどういうことが教えられているのかを十分学生に呑(の)み込ませることは、できていないように思われる。例えば理学部に入学して物理学を研究しようと志す学生が、物理学とは一体どういう学問であるかを知っている程度に、法学の何たるかを知って法学部に入学してくる学生は、ほとんどないのではあるまいか。さればこそ、法学部が入学試験を行うに当っても、一般に法学的学科を試験科目に加え得ないのであって、このことを考えただけでも、法学部の新入学生に対しては、研究上その入口において、先(ま)ず法学の何たるかを十分に教える必要のあることがわかると思う。」

 上記で言う「法制経済」というのは、現代の科目で言うと「政治経済」に最も近いようです。また「法学通論」の「通論」というのは「全般にわたって論じたもの」という意味であり、「総論」に近いようです。
 それでは今回はここまでとして、次回はこの続きからご紹介しましょう。

(文責:弁護士 澤村康治)
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