丘浅次郎の名言紹介を続けます。
「しからば国と国とが連合することがあるのはなぜかというに、これは連合しなければ自分の生存が危うくなるごときときに限るのである。狼でさえも一匹で手に合わぬものに対するときは力をあわせる。たとえば大きな牛を取るときなどは四五十匹も狼が団結することさえあるが、国と国との連合同盟などいうものは全くこれと同様である。一匹の兎を見つけたときにはこれを奪い取るために互いにかみ合い殺し合う狼どもが、大きな牛に対するときは多数力をあわせてかかる。ひとり攻撃のときのみならず、防御のときにも同様のことをする。かくのごとくつねに単独の生活をする獣類(じゅうるい)でも強い敵に向かえば暫時(ざんじ)同盟するが、人類の国もまたこの例に漏れない。国と国との同盟などは全く生存の必要より起こったもので、必要がなければ決して起こるはずはない。文句には種々(しゅじゅ)立派なことが書いてあるかもしれぬが、その飾りをはぎ去って、正体をあらわせば、その真意義は狼の協力と毫(ごう)も異なるところはない。必要があればいつでも同盟し、必要がなくなればいつでも同盟をやめる。過去の歴史これを証明し、現在の事実これを明示し、将来の趨勢(すうせい)もまたそのとおりであろうと思う。国と国とが同盟すれば一国では取ることのできぬ国を取って分割することもできる。また一国では防ぐことのできぬ共同の敵を防ぎとめることもできる。約言(やくげん)すれば国と国とが相争うのは本来の常態であって、同盟は単に一時の便法(べんぽう)に過ぎぬのである。」
「国と国との同盟の真意義は狼の協力と少しも異なるところがなく、必要があればいつでも同盟し、必要がなくなればいつでも同盟をやめる。」という上記見解は身も蓋もないですし汗、少し極端ではないかとも思われますが、やはり忘れてはならない観点であろうとも感じます。因みに前回もご紹介したとおり、丘のこの名言は1905年(日露戦争の終わり頃)に書かれたものですが、日露戦争(1904年~1905年)前の1902年に締結された日英同盟は、第1次世界大戦(1914年~1918年)後の1923年に解消されています。
それでは今回はここまでとして、次回はこの続きからご紹介したいと思います。
(文責:弁護士 澤村康治)