末広厳太郎の名言紹介を続けます。
「 従って第二に、折角(せっかく)大学に入った以上、極力(きょくりょく)講義に出席して、毎日毎日の努力で法律的考え方の体得を計らなければならない。無論、読書によってこの考え方を習練することも決して不可能ではないけれども、聴講によるのに比べると非常に困難である。平素はあまり講義に出席せずにプリントや教授の著書で試験勉強をしても、考え方の力がつかないから駄目である。力というものは、毎日毎日の努力鍛錬によって段々に発達するものである。だから、教授のなかでも特に教育方法に注意している人々は、学生に段々と力をつけてゆくことを力(つと)める。初めは比較的容易な考え方を習得せしめ、これによって段々力がついてゆくのに連れて、複雑な考え方を習得せしめるようにしてゆく。だから入学の当初、「まだ一学期だからいい」などと呑気(のんき)に構えていると、そのうちには教授の教えることの意味を理解することさえできないようになりがちなものである。学生として一番おそれなければならないのは、自分ではわかったつもりでいて、実は講義の真意を理解していないようになることであって、入学の当初になまけると、とかくこういうことになりやすい。人間というものは、他人の言うことを聞いても、本を読んでも、自分の力相応(ちからそうおう)にしか理解し得ないものである。しかも自分の力の不足には気づかずして、各人それぞれ自分だけはわかったように思うものである。『勉強もするし、また自分では十分わかっていると思うのに、どうも成績が上がりません』など言っている学生のなかには、初めにボンヤリしていて力が後(おく)れてしまった者が多いのであって、新たに入学された諸君は、特にこのことに注意する必要がある。」
勿論、個人差はあると思いますが、どんな分野であれ特に初学者はいきなり本を読むなどして独学するよりも、まずは専門家による講義・解説等を聞くなどして基礎的・基本的事項や全体像などをざっくりと理解していく方が、学習効率が高いように思われます。「人間というものは、他人の言うことを聞いても、本を読んでも、自分の力相応にしか理解し得ないものである。しかも自分の力の不足には気づかずして、各人それぞれ自分だけはわかったように思うものである。」という上記言葉には、何やらハッとさせられます笑
それでは今回はここまでとして、次回はこの続きからご紹介したいと思います。
(文責:弁護士 澤村康治)