澤村こうじ法律事務所

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コラム2024年0227

名言紹介(35)「森鴎外 その10」

 森鴎外の名言紹介のラストです。

「これも津和野人(つわのじん)の正直な處(ところ)だと云つて(いって)好からう(よかろう)。尤(もっと)も私の正直も絶待的とは行かない。私だつて知らず識(し)らず多少虚飾(きょしょく)をしてゐ(い)る。多少えらがつてゐる(えらがっている)。けれどもさう(そう)ひどく飾つてはゐない(かざってはいない)積(つも)りですが、どうでせう(どうでしょう)。諸君はどう思は(わ)れます。私は津和野人が努めて小才(こさい)を苅り除いて、正直を保存して、眞(まこと)のえらい人間になるやう(よう)にと願ふ。見れば私の饒舌(しゃべ)る事を速記してゐられるが、後に讀(よ)んで見たら餘程(よほど)變(へん)な物だらう(だろう)と思ふ(う)。それから新聞記者の先生も明日新聞に書かう(かこう)と思つても、餘程お困りなさるだらうと思ひ(い)ますね。實(じつ)は其(その)邊(へん)が私の大いに得意とする所であるかも知れません。なんにしろ此(この)席で混沌(こんとん)と云ふ(いう)問題で混沌たる事を饒舌つた(しゃべった)段は、慚愧(ざんき)の至(いたり)であります。」

 以上10回にわたって森鴎外の名言をご紹介してきました。
 この名言を読む限り、森鴎外は十分に器が大きい人物だと私は感じますが笑、皆さんはいかがでしょうか?

(文責:弁護士 澤村康治)
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